京Pブログ

「重い障害があっても挑戦したい」難病の人たちのそんな想いに少しでも手助けになるよう、自身の体験談等をお伝えできればと思います。

気管切開を経験したことでこみあげるもの

 先日武藤将胤さんの書籍「KEEP MOVING 限界を作らない生き方_ 27歳で難病ALSになった僕が挑戦し続ける理由 」を読んでいると気管切開のことが書いてありました。

 

 ふと思うと僕が気管切開の手術を受けたのが昨年8月31日、その日を思い出します。もう少しで1年が経過します。

 

失ったものがあるからこそ見える希望

 

 手術前は鼻マスクでした。鼻から下に向かって空気が送られていましたが、気管切開の場合は逆バージョン。今は気管から上に向かって空気が送られています。

 

上に空気が送られるということは、押し出そうとする力もそれだけ強くなるわけで、だ液も鼻水も吐出しやすくなりました。その証拠に朝起きると、鼻水もだ液も鼻から溢れています。

 

ただ、どうしても吐き出す筋肉が弱いので、空気が手伝ってくれる分にはいいですが、食事をすることは困難になりました。鼻マスクの時は空気を利用して飲み込んでいたのが通用しなくなったからです。

 

 通常健常者の人は気管に誤嚥しないように、舌で上手く壁をつくって飲み込むそうですが、その時は呼吸はしていません。

 

一方自分はというと、舌が前に飛び出していたり、動かす筋肉がない為、壁をつくれないのです。自然に呼吸と同時に飲み込む構造になっていました。

 

 残念ながら気管切開により、空気の流れが変わったことで、現在も食事はとれないですが、意外と希望もあります。

 

それは「しゃべりやすくなったこと」「痰を出すのに苦しまずに済むこと」。

前もお伝えしたかもしれないですが、「人生を前向きにエンジョイ」出来るのは、まさにその要素が大きいです。

 

特にしゃべる機能は、病院の先生が残してくれた産物だと思っています。自分の求める方向に導いて下さった先生には本当に救われました。

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苦しんだ体験から伝えられること 

 

 手術後はこの上ないしんどさを味わいましたが、最もしんどかったのは気管切開をちゃんと理解してなかった時期かもしれません。

 

だから尚更、先生に初めて聞かされたときは頭がおかしくなりそうでした。

 

1番に頭に浮かんだのは、もう死と隣合せの状態でして、「しゃべることはもう2度と出来なくなるし、痰が止まらなくなるだろう」。絶望的なものしか思い浮かばなかったです。

 

 先生が言われたこともまともに理解できないまま、徐々に状態は悪くなっていきました。

 

もうこうなると手をこまねいている余裕がないので、声を失う前提で命をつなごうと思ったのです。「この逃げ場のない苦しみはどこにぶつけていいのやら」、地獄に突き落とされた気分でした。

 

 こんな時、手を差し伸べてくれたのも先生です。分かりやすい説明をいただき、気管切開の知識が増えたことで気持ちがスッキリしました。

 

知ってると知らないとでは精神的に大きな差があります。どうやらこの安定したモチベーションが今の状態に繋がっているようです。

 

 こうやって「会話が出来たり」「介助があれば外出出来たり」「痰が少ない」のも、出会えた病院との巡り合わせがあったからと思います。

 

 先日、武藤将胤さんの書籍の中に、

 

「気管切開して人工呼吸器を装着することで呼吸が維持できれば、差し当たって命の危険を遠ざけることができます。」

 「ただその場合、自分の声で話すことが難しくなります。人とコミュニケーションをとる方法が減っていく中で、声を失うのは大きな不安材料です。」

 

出典元:KEEP MOVING 限界を作らない生き方_ 27歳で難病ALSになった僕が挑戦し続ける理由「武藤将胤」 株式会社誠文堂新光社 2018年出版 978-4-416-61839-4

 

とありました。

 

まるで気管切開の知識を得る前の僕と重なる気がしてなりません。

そう思うと何も行動を起こさずにはいられませんでした。

 

 「もし、本当に声を失うとポジティブになれるだろうか?挑戦する気力が生まれるだろうか?もしも声を失った後で、気管切開しても声を出せた方法があるのを知ってしまったら・・・・・」。

 

後戻り出来ない現実に僕なら耐えられないと思います。

 

 気管切開後の発声については既にご存知かもしれないです。病気も進行スピードも違う為、何とも言えないませんが、伝えることで「何かが変わる可能性だってあり得ます」。

 

 おせっかいと思われてもいい。今後同じような悩みを抱えた人がいるならば発信していきたいです。

 

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